猫のベッドで昼寝して

翻訳の傍ら脚本を書いてます。日常の書き溜め。

天神さまのほそみち(@下北沢)

下北沢ザ・スズナリで「天神さまのほそみち」という舞台を観劇してきました。

本当に久しぶりの観劇。生き返るなー。

 

劇場に入る前の消毒、間をあけた入場制限、座席も少し離れていて換気もされており、コロナ対策もしっかりされていて安心感ばっちりでした!

 

「天神さまのほそみち」について

〇脚本 別役実

〇演出 坂手洋二

燐光群公演

今年3月に死去した別役実が作劇を手がけ、1979年に文学座で初演された対話劇。

Tenjinsama no Hosomichi

 

お話について(パンフレットより)

別役実戯曲の中で『もっとも不条理』と評される、怒涛の対話劇。

私たちの胸に突き刺さる、誰とも共有できない『孤独』の肖像。

初演から40年。内向と分断の衝突が、ボーダーラインを越える!」

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初夏。たまたまその場を通りかかった「通りすがりの男」。そこへ次々とやって来る「普通の人たち」

 

「通りゃんせ」を口ずさむ着物姿の奇妙な女、

「場所を取っておいてくれ」と頼む屋台の男

「ここは俺の場所だ」と言って、最初に取っていた屋台男の場所を横取りする人参売りの男

勘違いから、その人参売りの男に絡む老婆

「あなたの家の前を、虎が通りましたか……?」と延々と質問してくる男。

 

それぞれの主張はなんてことない些細なものであるにも関わらず、「通りすがりの男」以外の人間は、皆主張を一切曲げないのである。

 

その一人一人の主張を聞いてやり、何とか皆の誤解や食い違いを解いてやろうとする「通りすがりの男」。

 

皆が好き勝手に自己主張する中で、「通りすがりの男」だけが全員に耳を貸し、その場を上手くおさめようとする。

一番まともに見えていた「通りすがりの男」が、一方通行のコミュニケーションを浴び続け、だんだん孤独になっていき、最後は「自分だけがおかしい存在」になってしまう。そして最後の結末。

まさに狂気。

 

最初はすれ違いコメディのように見えていた舞台が、だんだん時空がぐにゃりと歪みだし、男の目に狂気がやどっていく様子が、観ていて本当に恐かった。

 

アフタートーク

「この脚本が書かれたのは随分前なんですが、今こうして観るとSNSみたいなんですよね」とおっしゃっていて、確かになと思った。

 

一人一人の主張はささいなことでも、皆が「自分の主張は間違っていない」という前提で発言していたとしたら、隙間から思いもよらない狂気が生まれたり、誰かを闇に落とすこともあるのかもしれない。

 

さとうこうじさんが演じる男1の「虎を見ましたか?」の怒濤の会話の応酬が、途中から本当に気味悪くなってきて

 

男1 あなたの家の前を、虎が通りましたか……?

女1 虎が……? いいえ……。

男1 虎が、いいえ、と言って通ったんですね?

女1 通りません、虎なんか……。

男1 通りません、虎なんか、と言って通ったんですね?

女1 いいえ、通らなかったんですよ、虎は……。

男1 いいえ、通らなかったんですよ、虎は、と言って通ったんですか?

 

見ていると、こっちまで頭がどうにかなってしまいそうでした。笑

凄い迫力。

 

自分の気持ちが、誰とも共有できないと分かった瞬間、孤独に襲われ、自分でも想像できないような行動にでることがあるのかもしれないですね。